滝洞谷と並んで著名な石灰岩ゴルジュ、イワンヤ沢を訪れた。
随分前から気になっていた沢だったが、wakiさんの発案で、やっと訪れることができた。
当初はチーム男澤で行く計画であったが、最終的にはwakiさん、TSちゃん、僕という奇しくも数年前の滝洞谷と同じメンバーとなった。チーム石灰岩沢と名付けよう。
さてこのイワンヤ沢、ネット上では2019年以前の記録しか見当たらない(ただし、Twitterで今回の前の週の記録があった)。おそらく戸台河原駐車場が使えなかったり、南アルプス林道バスの運休等の影響で、ここ数年はあまり人が入っていなかったようだ。
それで、先に述べておきたいのだが、今回の遡行後に、我々の記録と過去のネット上の記録とを照らし合わせ、メンバーで話し合った結果、左俣は少なくとも2019年の状態から大きく地形が変化した部分があると結論づけた。詳細は後述する。
というわけで前置きが長くなったが、以下記録。
いつものように遠方から来てくれたTSちゃんを西岐阜駅で、そして近所のwakiさんを家でピックアップし、23:30に岐阜を出発。
南アルプス林道バス利用者駐車場に到着したのが2:30。すでに手前の駐車場は満車。奥の広い駐車場へ。かなり眠い。
今回、戸台河原駐車場は通行止めで使えないため北沢峠行の始発バスに乗って戸台大橋へ向かう計画だ。始発は6:05。準備やチケット購入を考えれば5時には起きた方が良さそうだ。2時間半睡眠か…テントも張らずそのまま地べたにマットを敷き、眠りにつく。
4時。目が覚める。次々に駐車場入ってくる車が気になり全く眠れない。結局ほとんど眠れないまま横になって過ごした。
5:30。チケット売り場は長蛇の列。歩いて戸台大橋まで向かうことも考えたが、とりあえず並んでみる。結果的に10台目のバスに乗ることができた。ちなみに南アルプス林道バスが運行するバスは10台とのこと。つまりこれに乗れなければ、北沢峠から戻ってくるバスを待たなければならないところだった。危ない危ない。
ちなみに片道料金300円だが、手荷物料金が150円なので、一人450円ナリ。
6:25。戸台大橋着。戸台河原駐車場を経由し、戸台名物の河原歩きにかかる。
出だしからめちゃくちゃキツイ。完全に寝不足が原因だ。すぐに汗が吹き出しふらふらだ。僕は今日はダメかもしれない。
それにしても戸台といえばダルい冬の河原歩きのイメージが強く、とにかく面倒な印象だが、軽いスニーカーで歩くとなかなかどうして爽やかな気持ちだ。(ただし寝不足でキツイのはどうしようもない)
↑開放的な河原。気持ちが良い。
7:30。イワンヤ沢出合に到着。噂通り入口は地味。白い岩が目印になるかな。
ここにスニーカーなど不要な荷物をデポして、入渓。
少し歩くと12mの滝。ここは右岸側にトラロープがあるので、そちらから巻く。
↑撮影:wakiさん
さらにゴーロや小滝を適当にこなしていくと、正面に巨大な壁が見えてきた。
↑伝わらんなぁ。ヤベェ壁なんですよマジで。
壁を右に見ながら沢が左に折れると、記録でよく見かける洞窟状の滝が現れる。
これは特殊な光景だ。過去の記録には登れそうとの記述も見られるが、僕には厳しいと思う。これは見るだけでも価値のある滝だ。これも右岸から巻く。
その先に進むと、左岸側に先程よりさらにヤベェ壁が現れる。
↑フランスのセユーズを思わせる(見たことないけど)
そして、今度は右岸側にこれまたすごい壁を側壁に持つ尾根が現れる。これが地形図にも書かれている幕岩だ。
幕岩の基部を沢が右に折れて、小滝をいくつかこえると、二俣に到着。8:20。
二俣で休憩がてら登攀具を準備し、8:40に出発。ここから左俣へ。早速激狭ゴルジュが我々を迎える。
激狭ゴルジュに入るとすぐにCS滝5m。多くの記録でF1と呼ばれている滝だ。ネット上の記録と見比べると下地が少し下がっており、高さが増しているようだ。
ここはロープを出さず、左の水流をシャワーを浴びながらフリーで。いきなりめちゃくちゃ水を浴びる。
続いてすぐに7m滝。これがF2だろう。
↑撮影:wakiさん
ジャンケンに勝って僕がリード。水流の右側を登る。まずはフェルトソールで登ってみるが、出だしが悪い。一旦降りてお守りとして持ってきたフラットソールに履き替える。これが正解で、割と簡単に出だしをクリア。すると残置ハーケンを発見。しかしその先がなかなかに怖い。ハーケンを打つもののほとんど効いておらず気休め状態。仕方なくそれで突っ込む。自然と声が出るが、行ってみれば案外簡単。ただ、フェルトソールでは怖いと思う。
↑撮影:wakiさん
F2を抜けると、怪しい残置ハーケンが2枚のビレイ点。怪しいが他に何も取れないのでこれでビレイ。
後ろを振り返るとゴルジュの細さがよくわかる↓
続く滝は1mほどで問題なし。wakiさんがその先の4m滝とまとめてリード。
さて、下の写真を見てほしいのだが、かつてはこの4m滝の落ち口にCSがあり、ここが核心となっていたようだが、見ての通りCSは無くなっている。簡単になったのかはわからないが、wakiさんは水流の左をフリーでノープロで抜けた。
↑手前が1m滝、その次が4m滝。wakiさん(上の人)が立っているあたりにCSがあったようだ。
そして、問題となったのが次の滝である。
ネット上の過去の記録では、先程のかつてCSがあった4mの後に1m程の滝があり、その次の2〜3mほどのスラブ状の滝を登ってゴルジュ終了となっている。しかし先程のCSが無くなった影響でその1m滝が無くなり、スラブ状の滝の下地が下がって一つの7m程の滝になってしまったようだ。この7m滝が本山行の大核心となった。
↑4m滝基部から。奥が7m滝。wakiさん撮影。
↑7m滝基部から上を見上げる。wakiさん撮影。
まずはwakiさんが取り付く。出だしがかなり悪いが、あるムーブで見事に解決。しかしその後も悪い。降りたり登ったりを繰り返しつつも、一つカムをセットしたところで一旦僕にバトンタッチ。
↑撮影:TSちゃん
しかし、僕は出だしのムーブが苦手でなかなかできない。なんとか解決したものの、やはりその後が無理でテンションをかけたら、カムが抜けてフォール!低かったので全然問題なかったが、バトンタッチ。
こんな調子で抜けるカムなどに苦戦しながら交互に挑戦するものの、遅々として進まず、時間だけがどんどん過ぎていく。中間部はwakiさんがカムを使ってA1で解決するが、上部も厳しそう。
もう、これでダメなら敗退を検討しますかというところで、ザックを下ろしてwakiさんがA1でハング下まで行くが、最後は沢靴では厳しそうとのことで、フラットソールを履いた僕に交代。
↑撮影:TSちゃん
wakiさんが設置したアブミでハング下まで登り、ここで長考。スタンスが細かく、ホールドが脆い。しかもプロテクションが取れない。ハーケンを打ってみたものの、またも岩が動いて気休め程度。仕方なくその上の脆そうなリスにボールナッツを差し込みA0。意を決して、吠えながら落口へトラバース。声を出さないと怖くて仕方ない。やっとのことで登り切り、拳を突き上げ歓喜の声を上げた。下を見るとボールナッツは抜けていた。
↑撮影:TSちゃん
立木でビレイして、後続を迎え。左俣ゴルジュ脱出完了。12:50。距離にして200mもない区間に4時間以上かかってしまった。
その後に続く地味に悪い小滝群をラバーソールを履いたwakiさんに手を貸してもらいながらこなし、左岸側にコルが見えたところから、踏み跡を辿って右俣へ。
右俣に降り立つと上流側に15m程の滝があった。ここから右俣ゴルジュの下降にかかる。
最初の三つの滝は立木で50mいっぱいで懸垂下降…のつもりだったが、3つ目まで降りるとロープがスタックしてしまったので、2人は3つ目まで懸垂で降り、3人目は2つ目の滝まで懸垂したところでロープを抜き、最後の滝を滑り降りた。
↑滑り降りた滝。wakiさん撮影。
次は流木に捨て縄がかかっていたため、これを利用して下降。3つの滝をまとめて50mいっぱいで下降した。3つとも釜が深く、懸垂しながら泳がされることになった。3つのうち最初に降りた滝は、登るとしたらかなり厳しそうだった。
↑カッコいいゴルジュだ。wakiさん撮影。
最後に二つの滝を流木を使って懸垂すると、すぐに二俣へ到着。15:00。長いゴルジュ周回だった。。眠かったこともすっかり忘れて、夢中になっていた。
後はもと来た道を戻るだけだ。45分ほどで戸台川へ到着。もう帰りのバスは間に合わないだろう。しかし、面倒な河原歩きも長い林道歩きも充実感で満たされた今日の我々にとっては全く問題ではなかった。
・時間
6:10仙流荘前よりバス乗車-6:25戸台大橋-7:30イワンヤ沢出合-8:20二俣-12:50左俣ゴルジュ終了-15:00二俣-15:45イワンヤ沢出合-18:00南アルプス林道利用者駐車場
・使用装備
50mロープ×2本(50mが2本あれば懸垂下降が便利)、カム、ボールナッツ、アブミ、ハーケン(岩が脆くあまり役に立たないが無いよりマシ)
・靴について
wakiさん→ラバー、TSちゃん→フェルト、僕→フェルト&フラットソール
ラバーもフェルトも一長一短という感じだが、フェルトだとかなり厳しい箇所が何箇所かある。フラットソール(クライミングシューズ)があると安心。
・遡行図
・その他雑感。
石灰岩沢だがヤマビルは見なかった。
ゴルジュだが特別寒くもなかった。
仙流荘の日帰り入浴は今時500円と良心的。
夕飯は田村食堂にて伊那名物ソースカツ丼。カツがびっくりするほど分厚い。
ここまできたら次は西上州の地球儀滝に行きたい。