妻と二人で笠置山に行った。
翌週からは雪が降る予報だ。まともにトライできるのは今週が最後だろう。
当初はパートナーが見つからず、諦めかけていたが、妻が予定をずらして付き合ってくれた。
僕らが岩場に着くと男女二人パーティが既に準備をしていた。
佇まいからして、明らかに達人だ。
まずはカロリを登る。トップロープを張って妻が練習する。
実は彼女も今日はカロリのRPを狙っている。
隣では、例のパーティの女性が無名にトライしている。
初めてのトライという様子だったが、テンションをかけながらも、すぐにムーブを解決して上まで抜けていた。つ、強い…!
そのパーティの方に一声かけて、ヌンチャクを借りて僕もトライするも、当たり前のように核心でフォール。
完全にワンテン地獄に陥っているので、核心のムーブを根本的に考え直してみる。しかし、やはりどれもしっくりこない。結局は元のムーブでやるしかないか。
降りてきて妻をビレイ。
妻は少し悩んでいる様子だったが、思い切ってロープを落とし、リードトライ。
結局、不思議なほどよどみない登りでRP。核心の一手はこれまでのトップロープでのトライの様子が不思議に思えるほど簡単にこなしていたように見えた。
素晴らしいトライで、数年越しの課題をついに片付けた。おめでとう。
彼女の勢いを是非借りたいところだ。
2回目のトライの前に、件の女性の登りを見ていたら、一つのヒントに気づいた。
なるほど、レストか…
それまでの僕のレストは、正直あまり休めていなかった。あの方法なら…試してみよう。
早速取り掛かった2回目のトライは、レストポイントでの回復が良く、かなりの感触の良さだったが、核心の一手が微妙に届かずフォール。
それでも、次はかなりの確率でイケる気がした。
そして今日3回目のトライ。
もうこのルートはたくさんだ。早く次に進ませてくれ。祈る気持ちで取り付きのガバを掴んで離陸した。
全てのムーブは完全に体に叩き込まれている。それをミスなくこなすだけだ。問題なくレストポイントに到着。
件の女性のトライから着想を得た体勢でシェイクする。パンプし始めた前腕に血が巡る。いける!
核心の一手目のカチに左手を出す。そこからの三手。ついにパズルのピースがはまった。
「やった」
終了点のガバを掴んでつぶやいた。
一応これで数年ぶりにグレードを更新した。
正直に言って、今の僕が過去最高のコンディションだとは思えない。もっと調子の良かったこともあると思う。
それでもグレードを更新できなかったのは、岩場に通うという努力ができなかったからだろう。飽きっぽい性格の僕にフリークライミングは向いていないのかもしれない。
それでも、クライミングは面白いと思うし、もっと難しいものを登りたい。
「君にはね、努力とか頑張りっていうものが足りなさすぎるんだよ」
取り付きで改めて見上げた無名のルートが僕に語りかけてくるようだった。
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夫婦ともに宿題終了!やったー